結論
性悪説で作られた刑法202条
第202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、 又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、 6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する
2017年3月の文藝春秋誌で橋田壽賀子氏が「安楽死で死なせてください」という発言をされて以来、私たちは安楽死の問題に取組み、200冊近い文献と多数の関係者との対話により研究活動を行ってまいりました。その成果に基づき私たちの研究活動の結論を要約すると次のようになります。
安楽死とは所詮自死・自殺のことである。したがって自殺は無罪であるから、自力で安楽死すれば無罪である。しかし重病のため自力で死ねない場合、医師など第三者の助けが必要である。もし医師が患者本人や家族の要請によって注射で患者を死なせると、刑法202条自殺ほう助罪として有罪となる。このためガンなどの不治の病で苦しんでいる患者や家族はしばしば死なせてほしいと医師に嘆願するが、医師は手を下すことが出来ず板挟みで苦しむ。
しかし考えるとおかしい。刑法は悪事を働く者を処罰するために性悪説に基づいて作られている。患者や家族に嘆願されて注射をする良心的な医師の善行を性悪説に基づく刑法で断罪するのは越権行為である。したがって、「善意でもって患者や家族から懇願されて行った注射などの善行すなわち致死行為は、違法性を阻却されて刑事責任の対象にならない、刑法202条を適用しない」という法的処置が必要である。
安楽死が認められないことによって苦しんでいる多くの患者や家族がおり、また患者や家族の苦しみを見ながら助けることが出来なくて良心の痛みに耐えている大勢の医師がいます。他方、過剰医療により家計や国の財政にむだな経済的負担をかけているという実情があります。しかもその三重苦は全く根拠のない苦しみです。刑法を現場の実情に合わせて適用することにより安楽死を合法化すれば、一石二鳥いや一石三鳥の効果があります。
安楽死問題は今や世界的に大問題となっていますが、ムダな先入観を払拭して頭を冷やして熟考すれば、自ら上記のような解決策が見えてきます。この結論に基づき、私たちは「戦略」コラムの孫子流戦略論で述べたように、大勢の会員を集めて法廷闘争を通して安楽死合法化の道を切り開いて行きたいと決意しています。皆さまのご支援を期待します。
2016年および2019年にカナダ連邦議会とドイツ連邦議会が、刑法の自殺ほう助および同意殺人の全面禁止の規定は憲法違反であるとして、この刑法改正によって安楽死を合法化した。
参考
カナダ
*カナダにおける積極安楽死の合法化に関する研究
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03517/
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*安楽死幇助が合法化されたカナダの現在
http://u0u1.net/wEN9
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ドイツ
*2020年2月28日のNHK/BS1のニュース報道(ドイツ第2放送ZDF発)
ドイツ連邦憲法裁判所は2月26日10時5分に、安楽死の件ついて、自死の権利を認めると発表した。
刑法217条には、他の者の自殺を幇助した者は最高禁固3年の刑で罰せられると述べている。これにより医師が自殺幇助を行うことが禁じられている。2015年にドイツ連邦議会は尊厳死協会の要請を法律で阻止した。このため医師や重症患者は憲法違反であるとの訴を起こした。
ついにドイツ連邦憲法裁判所は判決を下し、2015年に制定されて自殺幇助を禁止した法律は憲法違反であると裁定した。水曜日にカールスルーヘ裁判所で裁判長アンドレアス・フォスクーレは、自死する個人の権利を認めた。これによって個人は自死し、他人から自死の幇助を受ける自由を持つことが保証された。このため患者や看護師や医師の要請にもとづき自殺幇助の禁止は無効とされた。